尾崎正覚
瓦礫八(2010年)
破 れ右翼鳶正月の天に舞う
鵯 目白追う共に二羽梅の枝 に吹雪く空現れ出づる鳥数多
時雨るなか路傍に鳩の
屍 あり通い道縄張り毎か鶺鴒おり
溜り水
脹 雀の集まれる白鳩の春田に
突 く群れ離れ春雨に猫出没す軒伝い
近づきて見えず遠くで見えし梅
新造の水路の隙に草萌える
春嵐カラス逆らひ流さるる
花満開蜥蜴は道に日を浴びて
花吹雪くなか鈴懸けの新芽吹く
花見客混む足下に菫咲く(仁和寺にて)
鳥狙う猫葉桜の並木道
五月晴れカラス鶺鴒襲いおり
老母病むメダカ
増殖 おり泉水に生垣を山椒突き抜け茂りおり
病む老母死期詠む作句若葉寒
若葉寒耳鳴り絶えず只管打坐
物買う間蜘蛛糸張れる自転車に
町なかの水田に鴨の羽繕い
水田に子鶺鴒餌を強請りおり
鳰の子ら育つ鷺亀鵜も居れど
梅雨を行く老婆が暫し腰伸ばす
頭を並べ児ら声上げて
蝌蚪 掬ふ鳶高く梅雨空に舞いカラス田に
宛も無く炎天に出で雲の峯
炎天の道に人無く黒
揚羽蝶 炎天に
燕雀 競い蜂を追う稔田に繁茂せる草放置さる
秋雨の刈田賑わう群雀
小春日の舗装路小さき枯蟷螂
舗装路を毛虫横切る秋の暮