(*初版掲載)この度、尾崎正覚師が『正伝の仏法』を妙壽寺仏法参究会から出版されることになった。
尾崎師は、先師の酒井得元老師に長年随身して聞法し、仏法を開眼し、それを深められた篤実なお方である。しかし、仏縁に出会う前は、仏教関係の書籍を渉猟しながら、苦悶の日々を送った時期があったと述懐しておられる。師の篤い求道心が実を結び、吉祥の仏縁となったのが先師との出会いであった。
今回、師の長年の研鑚が実り、膨大な資料を丹念に整理編纂し、一冊の本となって結実した。道元禅に正伝の仏法を感得し、『正法眼蔵』を通して只管打坐の坐禅を自参自究し、思索を深められてのことである。
折りしも、本年は高祖道元禅師七百五十回大遠忌の年であり、さらにまた、先師慧秀得元大和尚の七回忌の年でもある。先師は生涯を「正法眼蔵」の参究に注ぎ、高祖道に殉じ、山奥の山寺でひっそりと消えていった。そのご遺徳を偲んで今回の出版となったもので、時の流れと共に忘れられかねない先師の記憶を再び呼びもどす快挙であると信ずる。
出版に際しては、その労をいとわず、これを誠心誠意支えてこられた関係各位に深甚なる謝意を表わすものである。
慶福寺現住 酒井忠司 九拝