本書の内容は、平成25年9月、大阪民事調停協会の研修部から依頼を受けて講演した「仏法(大自然)と坐禅」の内容を基本に執筆したもので、一般に知られている仏教の概念とは大きな隔たりがあるが、本当の仏法についてこれだけは知って頂きたいと思うことを纏めたものである。
いわば拙著『正伝の仏法』(『正法眼蔵』と只管打坐)のダイジェスト版として利用されることを目論んだものである。
ところで、改めて仏法を理解するためのポイントを述べてみよう。まず、宇宙・大自然全体の大規模な生滅(生命)活動の事実とその活動の具体的な姿である身体の生命活動、そして更に身体の一部である脳の自我活動(欲望追求)等の基本的な関係を理解する事が重要である。
そして仏道は、自我の働き(欲望)に振り回されない(超越)こと、少なくとも欲望を暴走させないこと(自我を否定するのではなく、自我を前提にしてそれに振り回されない)が肝要である。
従って仏法に適っているかどうかを判断するには、端的に言えば、自我(意識)に汚されているか否かの問題であると言える。
曾て故酒井老師は、しばしば犬・猫を例に出されて、人間のような自我意識を持たない彼等動物の方が却って自然に忠実であると語られた。
然し終生自我(自己満足追求)から離れられない人間にとっての唯一の救いは、死を見通すことが可能であることであり、そこから本来の生き方(畢竟帰処)を教える仏法を学ぶ事が出来ることであるとも言える。
次に、あらゆる事実が総て尽十方界(宇宙・大自然)のその時(一時)の様相であるという宇宙規模で物事を観ることが肝要である。
それに慣れれば仏法を理解する事はそれ程難しくは無いと思われる。因みに『正伝の仏法』の正伝とは生命の本来の在り方を努めることで、それこそが仏法であり、その具体的修行が只管打坐の坐禅だということである。
なお仏法につき更に詳細に知りたい方は、拙著『正伝の仏法』(『正法眼蔵』と只管打坐)をお読み頂く事をお勧めします。