『正法眼蔵』等に見られる仏法要語の意味は、通常の仏教辞典等の解説では真の意味が通じ難いので、基本的には酒井老師の平易な言葉で記述した。
「ハ」 「ヒ」 「フ」 「ヘ」 「ホ」
- 梅華
- 尽十方界真実の姿。
- 鉢盂(ハウ)
- 応量器。行鉢。尽十方界真実実践。行持。
- 薄伽梵(バギャボン)
- 世尊。
- 柏樹子
- 尽十方界真実である目前の具体的な事実。
- 白銀世界
- 仏の世界。
- 把定放行
- 把まえたり放したりの日常生活。把定放行逞風流=平凡な日常生活が風流(尽十方界真実)。
- 八大人覚
- 『遺教経』(釈尊の最後の教え)。少欲・知足・楽寂静・勤精進・不忘念・修禅定・修智慧・不戯論(八つの大人(仏)の悟・真実)。
- 八面玲瓏(レイロウ)
- 無相。捉え処無し。無色透明。
- 八戒
- 在家戒。不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒・不坐臥高広大床(贅沢な生活)・不著華鬘瓔珞香油塗身(装飾)・不歌舞作唱故往観聴(歌舞伎楽)。
- 八九成
- 上出来。八九割で十分。仏法(無量無辺)では「十成(完成)を忌む」。
- 八相
- 釈迦一代の姿。「降兜率・托胎・出胎・出家・降魔・成道・転法輪・入滅」。
生命の姿・根本。別に不生・不滅、不常・不断、不一・不異、不来・不去。- 八不中道
- 諸法の永遠不変の真実相。ありとあらゆるものは「八相(不生・不滅、不常・不断、不一・不異、不来・不去)」を逃れられない。
「生滅、常断、一異、去来」は諸法の真実相の在り方(『中論』)である。
「不」は絶対的、大自然の姿。- 太殺
- はなはだ。
- 巴鼻
- 手掛かり。面目。
- 破木杓
- 無限。
- 波羅提木叉(ハラダイモクシャ)
- 戒。別々解脱。処々解脱。一戒を持てばそれで成仏得道する。
- 般若波羅蜜
- 「心」。尽十方界真実。大自然の生命活動・働き。
- 万法証す
- 尽十方界真実に生かされる。
- 万里無寸草
- 無所得・無所悟(不染汚)の修行。何処へ行ってもよし(目的・目標無し)。
- 非
- 不・無・莫。只管。自然の絶対的な姿。人間の恣意の入る余地なし。仏法では否定の意味に使用する事は少ない。
- 彼岸
- 尽十方界真実。本来の在り方。
- 比丘・比丘尼
- 僧・尼僧。
- 鼻孔(クウ)
- 生命(活動)。生きている事実。坐禅。成仏。
- 眉鬚(シュ)堕落
- 区別がなくなる。平常底。全てそのまま頂く。全て尽十方界真実。
- 非思量
- 尽十方界真実人体の生命活動。身体の本来の在り方。不染汚。
- 非想
- 全て自然のままの姿。
- 非想非非想天
- 三界の最上界である無色界の最高の天。無色界は物質の観念とそれへの欲望を既に離れて、高度な精神だけが存在する。
ここにも四禅定(四無色定)があり、次第に「空無辺処」(虚空の無限性を観ずる境地)、「識無辺処」(心の働きの無限性を観ずる境地)、「無所有処」(何ものも存在しない境地)と高められて行き、最後に「非想非非想天・処」(意識も無意識もない境地)に至る。- 皮袋拳頭
- 臭皮袋。人間。
- 非達其理
- 非思量。理由も主張も無し。
- 畢竟帰
- 尽十方界真実を実践すること。大自然に帰ること。
- 毘奈耶
- 律。
- 毘尼
- 仏戒。戒律。
- 皮肉骨髄
- 身体全体。
- 披毛戴角
- 異類中行。平常底の実践。
- 白衣(ビャクエ)
- 在家。
- 百雑砕
- 粉々。正念。自我活動が休止した純粋な生命活動。宇宙の真実の姿。明鏡。
- 辟支仏(ビャクシブツ)
- 縁覚、独覚(小乗)。自己満足追求。
- 百尺竿頭
- 尽十方界。自己は常に現在(今)に生きている。
- 百尺竿頭進一歩
- 個人でなく尽十方界に生きる。坐禅。
- 百年抛郤(ホウキャク)任縦横
- 年百年中捨ててしまって気がつかない。行仏。
- 標準
- 証拠。
- 平等心
- 自我で物を見ない。
- 不
- 非に同じ。大自然の絶対的な姿。人間の恣意無し。
- 風火の動著(静)
- 肉体活動。生命現象。
- 風流
- 尽十方界真実を頂く生活。
- 不会
- そのままそっくり受け取る。身体の本来の姿。 * 会(理解)。
- 不依倚(イ)
- 只管。
- 不回互
- 独立している事。 * 回互(相互関係)。
- 不可
- 人間の意志・意欲発現以前の生命活動の様相。
- 不可思議
- 絶対的事実。
- 不可得
- 絶対的事実。尽十方界真実。意志・意欲発現以前。
- 不敢
- どういたしまして。
- 不管
- 採りあげない。
- 不行鳥道
- これこそは真実と云うこと無し(鳥道=決まった道無し)。
- 福(徳)
- 利益衆生、利他。真実性。真実実践。効果。満足感(感覚)。
- 不解
- そのまま。「不解の説法・聴法」(何の手心も加えない)。
- 不言
- 自己表現無し。宣言するもの無し。
- 不コ酒
- 酒を売らない。人を酔わせない。思想に陶酔させない。 コ=酒を売る。酒=無明・愚痴。
- 奉覲(ブゴン)
- お目にかかる。見奉る。仏を拝む時必ず顔を見る。
- 不識
- 大自然の生命活動。自然の姿。身体の本来の姿。
- 不思善・悪
- 不思の善悪。判断以前の姿。生命活動の表情。
- 伏惟(フシテオモンミル)
- どうかお願い。
- 不充飢
- 宇宙の生命活動(「飢」=生き続けること)。
- 不宿死屍
- ありとあらゆるものが時々刻々流動する姿。不著。
- 不生・不滅
- 絶対的な真実の表情。ありのまま生命本来の姿。「不の生・滅」。
- 補處(フショ)の菩薩
- 弥勒菩薩。釈迦に次いで五十六億七千万年後この世に現れるとされる。「一生補處の位」(後一生のみで仏になり得る位)に達しており、兜率天に住する。
- 不審
- ご機嫌いかがですか(挨拶)。疑わしい。
- 布施(波羅蜜)
- 成仏の姿。大自然の在り方。
- 不殺(セツ)
- 生かされている事実の絶対性ないしそれをそのまま頂くこと。
- 普説
- 平常の説法。上堂して焼香せず、法衣を搭けず正法を演説する事。
- 不染汚
- 自我意識の超越。自己満足の放棄。無所得・無所悟。
- 不曽
- 常に現在。露れたまま。
- 不増不減
- 何ともなし。
- 附嘱
- 授ける(頂く)。
- 仏教
- 「仏は教なり、教は仏なり」。尽十方界真実。
- 仏経
- 尽十方界真実。大自然全体が経。独断に陥らない。仏は経なり。
- 仏向上事
- 大自然の絶え間ない生命活動。全てのものが生き続けている事実。
- 仏事
- 仏化道事。真実実践。
- 仏之(ブッシ)知見
- 尽十方界真実。大自然の生命力。
- 仏種
- 諸法実相。宇宙の生命活動。仏性。
- 仏受用
- 痾屎(アシ)放尿、著衣喫飯、日常は全て仏(尽十方界真実)を頂戴。
この事実は本人が信ずるか否かに拘らず仏受用の事実である。- 仏寿量
- 尽十方界真実。
- 仏性
- 尽十方界真実。
- 仏祖
- 仏と祖師。尽十方界真実。
- 仏祖の要機
- 仏が仏を努力する(行ずる)。行仏。
- 仏土
- 生命活動のあり方。真実の世界。全ての根本。
- 仏道
- 仏法。尽十方界真実の実践。
- 仏法
- 宇宙・大自然の生命活動。尽十方界真実。宇宙・大自然の在り方。
- 不得不知
- 知らざることを得ず。身体の真実。分別・感覚を超えている。
- 不同小小
- なかなかのもの。
- 不如
- 絶対的。
- 父母所生の面目
- 眼前の存在の姿。尽十方界真実の姿。
- 父母未生已前
- 威音王已前、朕兆已前、空劫已前。尽十方界真実。本来の姿。
- 不用
- 只管(只管を努力)。脱落。
「焼香、礼拝・・を用いず(不用)」(ベン道話)は「不用の焼香をせよ」の意。
焼香等は第一義的ではないがその行為時は絶対的(その時の尽十方界の様相)。- 糞掃(フンゾウ)(衣)
- 袈裟の財(欲の対象にならず)。人間の価値観を超越。仏の姿。
- 分別
- 自我における恣意が契機となり、自然をそのまま素直に受け取れず、それを自我の都合にあわせ変えてしまうこと。顛倒。
- 平常心(是道)
- 宇宙・大自然の実態は平常底(何ともなし、当たり前)で真実。
- 平展
- 何とも無い。当たり前。
- 壁落
- 坐禅。
- 壁立千仞
- 絶対的事実。
- 偏
- 個別的なもの。 *正。
- 弁・ベン
- そのまま頂くこと。真実を頂く修行。努力。
- 遍河沙
- 大自然。世界全体。
- ベン肯
- そのまま頂くこと。真実を頂く修行。
- 遍参
- 尽十方界真実を修行。坐禅の内容。尽十方界真実人体の修行。遍十方界に参ずる。大自然に接し一体となる。
- 法
- 事件。事実。軌持(存在)。達磨。曇無。時の姿。法の事実は時。常に四大因縁和合(形=有)の働きが続いている。
- 法位
- 在り方。
- 法印
- 大乗仏教は一法印「諸法実相」(常楽我浄)であり、小乗仏教は三法印「諸行無常、諸法無我、涅槃寂静」とする。
- 法王身
- 真実そのもの。
- 抱学措大
- 思う存分修行する。
- 報身
- 受用身。積功累徳の報果即ち修行の報果を受用する完全円満仏(報身仏)。
法身仏の修証即ち尽十方界真実の実修実証の実態である。- 報仏恩
- 本来の姿に帰る。尽十方界真実を実践。坐禅。
- 方便
- 正修行。真実に沿った正しい方法。方=正、便=筋道・在り方。
- 法明門
- 真実の在り方。真実の表現。
- 法門
- 身体全体。尽十方界真実人体。
- 木人
- 坐禅人。
- 菩薩
- 菩提薩タ。覚有情。真実の実践。大士。
- 菩薩五十二位
- 十信・十住・十行・十廻行・十地及び等覚(五十一位)・妙覚(五十二位)。
- 菩提
- 大自然の真実。
- 法界
- すべての物を生じさせている。生かしている。尽十方界。
- 法華
- 全て大自然の真実の花盛り。諸法実相。
- 法性
- 尽十方界真実。
- 法身(仏)
- 尽十方界真実。仏即ち尽十方界真実を人格化した(法身仏)。
- 払子を振る
- 日常生活。
- 法相
- 真実は概念(言葉)を超えたもの。
- 発菩提心・発心
- 尽十方界真実に目を開き自己の本来の姿に徹する。エゴイズムの放棄。
自己の成仏の棚上げ。無所得・無所悟の修行。- 発無上心
- 平常心是道に目覚める。発菩提心。
- 仏・仏陀
- 尽十方界真実。尽十方界真実人体。覚者。
- 犯(ホン)
- 自我の暴走。
- 本覚
- 本来の悟り。本来成仏。
- 本行
- 尽十方界真実の姿。身体の本来の姿。
- 翻斧斗(ホンキント)
- 解脱。悟り。人生観の転換。生活姿勢の転換。
- 本証
- 本来成仏が決まっている。
- 本証妙修
- 本来の姿を修行。
- 本地の風光
- 全てのものの本源。大自然の真実。種々の様相を現じて生きる姿。
- 本有
- 概念上の本来の姿。
- 凡夫
- 凡心明瞭ならざるを凡夫と言う(定義)。真実が分からない人間。
- 本不生
- ありのままの姿。本来生じたものではない。
- 本分人
- 尽十方界真実人体。
- 本来の面目
- 尽十方界真実。
- 本来の自己
- 本来成仏。ある時ある手段によって把握することができるものではない。
信心決定すること以外に全く契機はない。