『正法眼蔵』等に見られる仏法要語の意味は、通常の仏教辞典等の解説では真の意味が通じ難いので、基本的には酒井老師の平易な言葉で記述した。
「タ」 「チ」 「ツ」 「テ」 「ト」
「ナ」 「ニ」 「ヌ」 「ネ」 「ノ」
- 第幾月
- 本来の姿(変化無し)。本当の月はこれだと示せない。これだと云った時は第二月(真実から乖離)。月を具体的に現せば色々有る。
- 大家
- 大衆。人。尽十方界。
- 大区区生
- 甚だ忙しい様子。区区は勤労の様子。生は助字。
- 大悟
- 尽十方界真実。本来の面目。すべて大悟の中で生きている。
- 大慈大悲
- 身心一如。尽十方界。
- 大死人
- 坐禅人。古木人。尽十方界真実人体。大死=自我意識を超越。
- 大衆
- 衆僧。
- 大乗
- あらゆるものが大自然している事実。尽十方界真実を生きている事実。一乗。全てのものが勝手に存在していない事実。
- 大事了畢
- 自分の真の姿(真実は体験・感覚出来ない)が分かり、初めて真の修行の基盤が出来、現成公案の信仰が決まる。只管打坐の信決定。『正法眼蔵』『永平広録』に「了畢」の語無し(「大事」は有り)。
- 体中玄
- 平常底の事実。如来全身。体=ものの在り方、玄=掴み所なし。
- 大悲
- 尽十方界真実人体(実態)。大自然の恵み。勝手に存在していない。
- 打失眼晴
- 対象無し。眼そのもの。自己満足の放棄。只管打坐。尽十方界。
- 他心通
- 尽十方界真実の正伝。師資証契。真実に通じ合う。只管打坐の実態。大自然の働き。 *他念通=他人のこころを読む。
- タダ
- 宇宙に施す。遣り放し。梵語でタは施す。ダは宇宙。
- 只這是(コレコレ)
- ただ生きてる(生きてきた)だけ。何時でもそのまま受け取る。
- 達彼達此
- どれもこれも。
- 脱落
- 解脱。尽十方界真実。大自然の絶対的事実。本来の姿。三昧。非思量。
- ダ泥帯水
- 水に落ちた人を泥まみれになって救う。無所得・無所悟の努力。利他行。
- 他念通
- 他人のこころを読む。
- 陀羅尼
- 総持(全てのものの在り方)。能持。無量の義。無量(全て)を頂くこと。絶対帰依。
報謝に徹す。坐禅を説く。礼拝を説く。- 断常
- 人間の思考方法(断見・常見)の基本的習性。「法は断常を離る」(尽十方界真実は人間の思考を超越)。
- 単伝
- 自己を修行すること。自己に徹底すること。生かされて生きている真実の在り方。
只管打坐の実態。正伝。- 壇度
- 布施。布施波羅蜜。壇波羅蜜。六波羅蜜の最初。
- 断滅見
- 得手勝手な考え・行動。
- 知
- 人間の知識・分別。別に大自然の働き。
- 智(慧)
- 大自然の働き・事実。般若。尽十方界真実。
- 知有底人
- 有ることを知る底の人:現実の絶対的事実(真実)をよく知る人。
- 逐浪
- 師家が対機(相手の器量)に従って指導すること。
- 知見
- 尽十方界真実の働き(の現れ)。
- 治生産業
- 生活全体。
- 智通
- 解脱。大悟。
- 著眼看
- 眼をつけよ。眼の付け所。ポイントだよ。
- 中道
- 仏性。全体・全部を見通すこと。これこそ(理想)と決まっていないこと。対立無し。
人間性を見通している大人。- 張公酒を喫すれば李公酔う
- 共通の物。
- 張三李四
- 特別なもの無し。熊さん八さん。
- 長者窮子(グウシ)
- 自我の暴走。『法華経』「信解品」の長者窮子の喩(法華の七喩)
- 朝宗
- 流れ込む。集まる。
- 鳥道
- 真実を行ずること。坐禅。真実は決まったものではないこと。
- 頂寧許(チョウネイコ)
- 無辺際。何ともなし。
- 彫龍
- 作仏の行。坐禅。
- 珎重
- お大事に。失礼。さようなら。
- 朕兆已前
- 尽十方界真実。宇宙・大自然の在り方。
- 都機(ツキ)
- 月。尽十方界真実。全機(都=全)。輝き続ける。宇宙の生命活動。
- 提唱
- 師家が宗旨の第一義を提起して、これを敷衍し開演すること。祖録を講ずること。
- 鉄漢
- 修行者。
- 転
- 活動。展開。実践。形(同じもの無し)。
- 伝
- 覚。菩提。現実をまともに頂く事。 達磨の一心戒文(伝とは覚なり)。
- 伝衣
- 達磨正伝の仏法は袈裟と共に伝わった。衣法一如。
- 転境転心
- 人間が、ナマの現実をそのまま素直に受け取らず、概念のフィルターを通して解釈すること。
- 展事投機
- 師弟の気脈が通じる。師は学人を思い(投機)、弟子は師に全て預ける(展事)。
- 天長地久
- 大自然の悠久な景色。本来の姿。尽十方界真実。
- 顛倒
- 自分本位。自我意識中心。
- 伝法
- 尽十方界真実人体の修行。
- 転(妙)法輪
- 真実実践。只管打坐。大自然の真実の展開。説法。
- 道
- 言う。言葉。真実。道得。元は「ドウ」という字。
- 道環
- 尽十方界の風景(天気のような変化)。宇宙の絶え間ない活動。
- 同参
- 個人的自己満足の追求ではなく、尽十方界真実の修行。坐禅。
- 東山水上行
- 尽十方界の生命活動。
- 等持
- 三昧。生命のリズム。
- 同時
- 同じように。同様に。(時=心)。
- 道場
- 真実が実践されている事実。ものの有様。
- 同生同死
- どこまでも変わらない。
- 透脱
- 脱落。現実をそっくりそのまま頂く。
- 同中異
- 同は二つに分かれる以前。異は汝と吾。
- 道得
- 尽十方界真実の表現又は実践。道=真実、言葉、言う。得は助字。
- 東方
- 宇宙において東方と言えば全て東方。東西南北全て同じ。宇宙に方角なし。
- 稲麻竹葦(トウマチクイ)
- 無数。
- 動容揚古路
- 動容を古路に揚ぐ。日常生活に真実を発見。:撃竹大悟(香巌智閑)。
- 動容進止
- 立ち居振舞い。
- 時
- 全てのものの在り方。「心」と同じ。
- 得
- 尽十方界真実が真実している。助字。
- 髑髏裡眼睛(ドクロリガンゼイ)
- 尽十方界真実の表現。あらゆるものの本来の姿。
- 度衆生
- 利益衆生。エゴイズムを捨てる。尽十方界真実を実践。坐禅。
- 咄(トツ)
- 叱る語。舌打ち。呼びかけ。驚き怪しむ。これが全部だ(話を終わる)。喝。
- 頓悟
- 只管打坐。
- 内外打成一片
- 全ての存在は尽十方界真実。内外の区別は無く、全てが一体の真実。
特別に体験することでは無く、現実が全て真実であること。- 何・恁麼
- 什麼・甚麼。問はそれ自身答(真実の姿)を示す。真実は無量無辺。
- 那由他阿僧祇劫(ナユタアソウギコウ)
- 無限。無所得・無所悟の修行。
- ならふ
- 実践。
- 難行・苦行
- 不染汚の行。自己満足放棄の努力。好みに走らない努力。
- 難思議
- 難解難入不可得の法。自我にとって「難」。非思量。大自然の絶対事実。
- 南方
- 仏が南向いていることから仏が指導すること。「北方」は私達が仏を拝むこと。
- ニイ
- 端的に指示する場合、それ見よ。それだ。そのままだ。〜きり等と師家が学人に詰問の意を示す場合、示衆の語尾に付す語。言外の意を聴取せしめる語。
- 而今(ニコン)
- 現実。現在。
- 入室瀉ビョウの衆
- 師資(弟子)証契即通(真実実践において通じ合う)の弟子。
- 入画看
- 仏法を学び始める。画=仏法。
- 入山
- 尽十方界真実(山)の実践(入)。
- 入信
- 受戒。
- 如(真如)
- 真実そのもの。相似(ごとし)の義に非ず。『維摩経菩薩品』が語源。大自然の在り方そのもの。尽十方界真実の生の姿。
- 如実知自心
- 無所得・無所悟に徹して尽十方界真実人体たる本来の自己を只管に修行。
- 如井チョ驢
- (ロバが井戸を見るだけでなく)井戸もロバを見る。両面から見る必要性。
- 如是
- 大自然の在り方そのもの。尽十方界真実の姿。
- 如許
- 無際限。
- 如如
- 平等・絶対的の意。
- 如来全身
- 平常底の絶対的事実。完全無欠の尽十方界真実。
- 如驢チョ井
- 我々が仏を見るのは、ロバが水を欲しげに井戸を見るように手応え無し。
*井チョ井チョ、驢チョ驢チョ=相手が見えるから自分も見えることが分かる。- 任心任法
- 一切お任せ。
- 忍
- 認識する。
- 人間性
- 自己満足或は欲望の現れである理想の追求に暴走する人間の習性。
- 忍辱(ニンニク)
- 平常底。利他行。現実をまともに頂く。超越。忍耐の意ではない。
- 忍辱仙
- 永遠の真実。平常底。
- 涅槃
- 常住。あらゆるものが変化しつづけていると言う事実は永遠に変わらない。
尽十方界真実。唯仏与仏。生命活動。当たり前。
同義語:無為・真諦・到彼岸・寂静・清浄・解脱。- 念
- 心(シン)。生命活動。脳の働き。心理現象。一念二念=生きている姿。
- 拈
- つまむ。採りあげる。実践。
- 念経
- 経の意味を考える。
- 拈華
- 尽十方界真実。真実の展開。真実の実践。真実の働き。
- 拈拳頭
- 握り拳。平常底。特別なものではない。日常生活。
- 念想観
- 瞑想。「念想観の測量」は生命本来の在り方から離れた染汚(自我)。
- 年代深遠
- 極めつくす事ができない。
- 然燈仏
- 宇宙全体の生命活動。
- 念慮
- 論理。
- 衲衣
- 物欲の対象にならない糞掃の袈裟。禅僧の袈裟。
- 能作所作
- 感覚作用。
- 能所
- 感覚(的)生活。主観と客観。
- 能所泯亡
- 主客合一。主客一体。依正一如。
- 衲僧・衲子ス
- 禅僧。禅の修行者。達磨門下の修行僧。坐禅人。