尾崎正覚
瓦礫一(1999〜2003年)余り苗
水田 の畦に枯れ果てる風邪に臥す熱の身体に念起なし
時雨来て
池畔 の鷺の身じろがず近づける吾との距離を鷺はかる
寄らざれの合図に
野良猫 復 日向ぼこ小春日に
翡翠 水面窺いて罰受けて立ちたる園児日は永く
燕らに鴉追われり街の空
路行きて子雀燕二つの
屍 葉桜の並木に毛虫無数なり
生 れしまま伸ぶ太き竹細き竹
番 鳰他の迷い子を追回す万緑に
椋鳥 もすずめも餌を銜 え大池の水際蝌蚪が占め尽くす
寝返りて念滅念起
遠蛙 医院軒子燕患者見合いたる
散歩道今日は蜻蛉の群れに遭う
浮浪者の路傍に睡むる西日受け
池遠き路傍に
屍 牛蛙起滅の念
蛙声 が勝り眠落つ水際にザリガニ蝌蚪ら共に生く
日盛りに雀バッタを弄ぶ
母の手の蝉欲しがる子恐れる子
只管 生きむ命ある間を蝉しぐれ背にバッタ老農が行く日盛りを
路に在るザリガニ吾にはさみ挙ぐ
腰痛む身の
勤行 なり夏懐炉大樹下鹿と憩える氷菓売り
空蝉の数多転がる大樹下
雷 に覚め雷 遠くなる虫の夜
一時 の雷 去り元の虫の夜念起滅せし間に雲の峰崩る
稲雀畦の水飲み秋暑し
雨上がり子猫ら
戯 れる秋の野に秋雨に乞食ら小屋の戸口閉め
往来の車の音絶え虫の声
摘みて知る露草蜘蛛の
棲息処 なりひつじ田に群雀なく蝶ひとつ
鴨来る子育ての鳰池におり
鴨来る未だ尾の残る蛙おり
ザリガニを捨て
翔 つカラス秋日和秋日和
道路 這う亀をそのままに秋の浜老爺の脚下鳩群れる
空中に鷺糞し飛ぶ秋日和
小春日に雀路傍で水浴びす
寒風の晴天鳶の急降下
冬
一日 行く宛てもなくペダル漕ぐ小春日の路傍の隙に菫咲く
除夜の鐘耳澄ましつつ懐炉
点火