尾崎正覚
瓦礫十(2012年)耳鳴りの他に音なし寒夜の寝
高き樹に鳥の巣露わ葉が落ちて
迎へ待つ園児窓辺に風花舞う
春泥の野道にナズナのみ咲ける
春めきて道路に据わり子等遊ぶ
春耕の田の上空に初雲雀
廃屋に梅咲くと告げ妻入院
初音聞く馴れたる道を変へ行けば
老い独り咲き初むる花見続けて
初つばめ医院の古巣帰りおり
濡れつばめ軒下の灯に羽休め
黄砂晴れつばめ囀り山青し
濡れるままカラス梅雨に身を任せ
雲の峰帰燕の群れの飛び交へり
赤とんぼ群れ飛ぶ青田吹く風に
稲穂垂る畦に一匹蛙跳ね
稲雀騒ぐをよそに鵙猛る