尾崎正覚
瓦礫十一(2013年)寒鴉吾れの通過を見続けり
寒の夜に妻の寝息の乱れ無く
立春の小雨に並ぶ濡れ雀
雀らの
枯ひつじ を掴み春日浴ぶ花日和園児
玄関 に這ひ遊ぶ水被る春田に田螺蠢ける
鳰も鳴く枯蓮池に春の鴨
見知る老い背筋も曲り花の道
花曇り
飼主 没後も雄鶏 鳴いてわが窓辺二羽の子つばめ羽繕い
燕飛ぶ田を鶺鴒は小走りす
撤去
址 草萌ゑ天に揚雲雀子の飽きしシャボン玉父吹き続け
梅雨の朝燕囀り園児泣く
とうすみの泉水に
生 れ庭を出ず蛙鳴く水田を円き月照らす
睡蓮の葉を中継に蜥蜴跳ぶ
水減る田蝌蚪水面に息継ぎす
炎天に微風老鶯長啼きす
青田より白鷺飛翔炎天へ
炎熱の青田交尾の蜻蛉飛ぶ
夕月出で刈田の香り百舌鳥猛る
老母逝く天に鳶舞ふ秋の暮れ
花に見ゆ柿の実鳥に施物なる
小春日の空にカラスの小鳥追う
冬の海かもめ杭
退 き鳶憩う冬の蠅
老夫婦 で追うも見失い霙降る溝川に草青々と