尾崎正覚
瓦礫十四(2016年)初春の青き
ひつじ 田児ら駆けて寒の池鵜が頭を出す汚水面
寒風にすずめ菜花と共に揺れ
寒戻る昨日の
浮塵子 消え果てり花冷えに鵜は羽を干し鷺不動
魚突く鷺の頭上に柳の芽
満開の桜並木に
野良猫 眠るスマホ見て語らひもなし花見客
満開の花の彼方に初雲雀
この春は雲雀も
鳧 も棲む田替え墓地に立つ大樹の桜花吹雪
機器入り潰れゆく田を燕飛ぶ
妻告ぐる蓮華(草)今年も
彼処 にと駐車場区割りの隙に
文字摺り草 交尾する雀彼方に笑ふ山
薫風に燕大きく育ち飛ぶ
釣り人の傍で
椋鳥 の子餌を強請る溝川ですずめ水浴び青嵐
鶺鴒の親子餌の授受初夏の
街路
白鷺 数多棲む夏木立動物園 の外飛ぶ鷺に襲ひ掛かれり二羽の
鳧 万緑の小路に子猫死に瀕す
雲雀鳴き
鳧 は水田を徘徊す梅雨晴れ間大亀路に轢死せり
己が巣を離れて
見守る 親つばめ子鶺鴒巣立ちを学ぶ屋根上で
箱入りのまま放置さる余り苗
赤とんぼ自在順風逆風に
炎昼にクマゼミのほか声を絶つ
炎昼にシャボン玉追う
保育園児 達雲の峰鶯の声里山に
鶯の声炎天に坂上る
炎天の溝に水なく草繁茂
青き穂の田の隣田は草繁茂
並木道山鳩歩き蝉時雨
吾を見て鷺飛翔てり炎天に
炎天にアゲハ車を避けて飛ぶ
老夫婦稲刈り始む猛暑日に
木犀の樹下に数多の曼珠沙華
秋晴れに毛虫に数多蟻
集る
不良少年 らが車中の蜂に逃げ惑う
台風 前天に大虹雲走る鵙猛る妻の退院いつの日か
久し道茶の花今も秘やかに
空中に蜘蛛巣を張れり紅葉道
小春日のタンポポの絮
保持 たれて小春日の日を避け影を選り歩く
我が行くて慌てず
過 る鶺鴒二羽歳晩に老婆窓拭き繰返す