5 『正法眼蔵』の特徴的巻々の関捩子
『正法眼蔵』は道元禅師が自己の信仰内容を詳細に明かしたものであり、各巻が各々独立して完全に「正法眼蔵涅槃妙心」即ち尽十方界真実を説いている。
従ってどの巻も重要であることは言うまでもないが、ここで全巻を紹介するには質量共に適切でなく本書の意図するところではない。そこで以下には一般的に通常の国語辞典的用語解釈では理解不可能と思われるような巻々について、簡単にその手掛り、ポイントを述べてみることにした。
ところで酒井老師が常々注意されていた事であるが、各巻は夫々道元禅師の綿密な仏法参究の展開が見られるが、それを読む場合、古文直訳の現代語訳化は無意味である。
何故なら仏法表現は通常の表現と根本的に異なるため、一字一句の古文直訳は意味をなさないからである。
また各巻の細部を読む場合にも、当然仏法の根本(その巻の要諦)を知って読む必要がある。
その意味で以下に述べる各巻のポイントがその際の指針になるのではないかと考える。なお参考までに、本項の末尾に『正法眼蔵』全巻(七十五巻本、十二巻本、拾遺等)の巻名を掲載したので、既述の各項(例えば「現成公案」、「般若波羅蜜」、「法華」等)及び各項内既出の用語(例えば「仏道」の中の「身心学道」等)、並びに本項各巻を除く巻名(*印)と同一の用語の意味は、後述「常用仏法要語」を参照されたい。
『正法眼蔵』の特徴的巻々の関捩子ー1
1 第六「行仏威儀」巻
6 第十四「空華」巻
2 第七「一顆明珠」巻
7 第十六「行持」巻
3 第八「心不可得」巻
8 第十八「観音」巻
4 第九「古仏心」巻
9 第十九「古鏡」巻
5 第十「大悟」巻
10 第二十「有時」巻
『正法眼蔵』の特徴的巻々の関捩子ー2
11 第二十一「授記」巻
16 第三十四「仏教」巻
12 第二十三「都機(ツキ)」巻
17 第三十五「神通」巻
13 第二十四「画餅(ガヘイ)」巻
18 第四十一「三界唯心」巻
14 第二十六「仏向上事」巻 19 第四十六「無情説法」巻
15 第三十一「諸悪莫作」巻 20第五十「洗面」巻及び第五十四「洗浄」巻
『正法眼蔵』の特徴的巻々の関捩子ー3
21 第五十一「面授」巻
26 十二巻本第十「四禅比丘」巻
22 第五十六「見仏」巻
27 十二巻本第十一「一百八法明門」巻
23 第五十九「家常」巻
28 十二巻本第十二「八大人覚」巻
24 十二巻本第五「供養諸仏」巻
29 拾遺「ベン道話」
25 十二巻本第九「四馬」巻
30 拾遺「菩提薩タ四摂法」巻
「正伝の仏法」・第V章 参究要点と常用仏法要語・1 参究要点(酒井得元老師の言葉)